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中国のジャグリングフェスティバルってどんなものだろう?
気になった著者が旅の仲間フジくんとともに目指したのは、中華人民共和国は雲南省の大理(ダーリー)。女性にいきなり怒鳴られたり、森の民に導かれたりしながら、たどり着いた場所で見たものとは。ジャグリングを介して繋がった人々や、街の人々のやさしさに触れる旅の様子です。
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ダーリーどうでしょう
中国って、特に行こうと思ったことがなかった。
別に中国が嫌いだというわけではない。僕には「行きたくない国」なんてものはない。行っておいでとチケットを渡されたら、どんな国だって行きたい。
でも世界の国々をリストにしたら、その中で順序はある。特に行きたいなぁという国があり、後回しでもいいかなぁという国がある。
そういう意味では、中国は後回しになっていた。
そもそも中国に行きたいかどうか、ということをあまり考えたことがなかった。中国の文化は大好きだが、それは「中国を訪れたい」という欲とは切り離されていた。
中国語も勉強していたし、中国の料理も大好きで、ホイコーロウは僕の得意料理である。パンダだって非常に可愛い。
でも国そのものにはあまり関心がなかったのだ。特に用事がなければ行かなくてもいいかと思っていた。
そして時は二〇一九年。
僕はfacebookで友達の近況を見ていた。ジャグラーの友達が多いので、自然とジャグリングに関する情報が多い。こんな技を決めました、ワークショップがあります、来週ここでイベントをやります、などなど、おびたたしい量の映像と画像と文言が並ぶ。無秩序に送られてくる情報の中に、重要なものはほとんどない。その日もまた、洪水に流されるように画面をスクロールしていた。
―――と、紅色の丸の下に筆文字が書かれたロゴが目に止まった。僕はスクロールする手を止める。それはイベントの告知で、投稿主の名前を見るとこう書いてあった。
「Dali Flow Fest(ダーリー・フロウフェスト)」
僕はジャグリングのフェスティバルにいくつも参加してきたけど、こんな名前は聞いたことがない。興味が湧いて、フェスティバルの情報を見るために公式ページをクリックしてみた。
詳細を読んで、あれ、と思った。何かが、頭の中で音を立てた。椅子を少し引いて、画面に近づいて、ページ中央にあったフェスティバルを紹介する映像をクリックし、観た。
ああ。
頭の中で堤防が決壊する音がした。
僕はこれに行くべきだ。
自分が行くことを心に決めたら、友人のジャグラーであるフジくんを家に呼んだ。
鍋をつつきながら、豚肉を美味しそうに頬張る彼に唐突に提案した。
「ねぇ、ダーリー行かない?」
フジくんは箸を止め、半笑いでこちらを向いた。えっ、なんですかそれ。
僕は身を乗り出して言った。
「中国だよ」
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前作『ジャグラーのぼうけん vol.1』の刊行より3年。
ついに続編が出ました。完全書き下ろしです。
どうぞお求めください。
著者:青木直哉
編集・レイアウト:中岡祐介(三輪舎)
発行・印刷・製本:生活綴方出版部
サイズ:A6小さめ
ページ:52P
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